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03:映画ココントコ。 2003年 上半期
男は夜汽車から降りて疲れ切っていた。ベンチに腰掛けて眠っているうちに殴られ、目が覚めたら過去をなくしていた。
顔の包帯がとれたとき、女に出会った。一目見て好きになった。
なくした過去を追うことはしなかった。
それでも時々溶接のことを思い出した。
犬を預かった。
破産したある男の願いを聞いてやった。
つまらない楽団を自分好みに改良した。
ちょうどいい具合に落ちていた家具やジュークボックスで何気なく暮らした。
ある日本当の過去がわかった。自分には妻がいた。
妻にはもう別の男がいた。男は妻の新しい夫と握手をして、
きびすを返し別れた。
ただ回れ右をしてまた駅に向かった。
忘れていた過去は取り戻せたが、その前から始めていた
未来の方が気になっていた。
男は車中で食事をしながら愛する女のことと犬のことを考えていた。
頭の中では行ったこともない南の国を歌う、異国の音楽が流れている。
マイナーコードだが、悲しくはなかった。
過去をなくした男

8人の女たち

女なら少々うらやましくなるような映画。女が美しく振る舞うのは、どこまでも自分のためなのだ…。ストーリーの巧みさやら人間を深く描く、やら、そんなことはもうどうでもいい映画のようだった。ただもう魅力的な、それぞれ違った個性を与えられた8人の女がいればいい映画。劇中出てくる唯一の男は一家の主でありながら後頭部だけの出演。しかし、この8人の女を手の上で転がしている「神」は若干36才の男性監督・フランソワ・オゾン。やられましたね。

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ボウリン

きっと笑うだろうなと思って出かけた。確かにすごく笑ったけど、終わった後無性になきたくなった。なんなのか自分でもよくわからず。悲しいのと感動したのとが入り交じって混乱したのだろうけど、一番大きかったのは悔しい、という気持ちだった。映画が終わって日本のことを思い出して(見た当時、日本政府はイラク攻撃のアメリカを無条件で支持する弁舌を毎日のように繰り返していた)、その絶望的なダメさ加減を思ったとき、政府や大企業のトップという一握りの人間が愚かなせいで多くの平民が死んでいる、ということを思い知った時、とにかく悔しかったのだった。そんなもやもや全てが最後、ラモーンズの投げやりな"What a wonderful world" で束ねられる。

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PLAY TIME

-- note --

過去をなくした男 アキ・カウリスマキ監督(フィンランド)
→5月 恵比寿ガーデンシネマ
 
8人の女たち フランソワ・オゾン監督(フランス)
→2月 銀座テアトルシネマ
 
ボーリング・フォー・コロンバイン マイケル・ムーア監督
(アメリカ)→5月 恵比寿ガーデンシネマ
 
プレイタイム ジャック・タチ監督(フランス)
→5月 渋谷パンテオン 70mmプレミア
 

バラの写真提供:花の雫さん
>>issueバックナンバーなんか5月に観たのんばっかしやね  
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